【天皇賞・春】ルメール騎手だからこその勝利! 勝ちを引き寄せる絶品のレース嗅覚

2020年05月07日(木) 18:00

哲三の眼

天皇賞・春連覇のフィエールマン(提供:デイリースポーツ)

今年の天皇賞・春は前年覇者フィエールマンが連覇を達成! さらに鞍上のルメール騎手は2018年の天皇賞・秋から天皇賞4連覇という史上初の快挙を遂げました。 馬の力もさることながら、今回はルメール騎手じゃなければ勝てなかったのではないかと感じたという哲三氏。誰もがルメール騎手は巧い…とはいうものの、いったい何がどうすごいのか? 哲三氏ならではの視点で、ルメール騎手の今回の騎乗を詳しく解説します。

(構成=赤見千尋)

ルメール騎手の引き出しの多さにあっぱれ!

 春の天皇賞は1番人気だったフィエールマンが連覇を達成しました。スティッフェリオとハナ差の決着で、ほんの少しの差で勝ち切れなかった可能性もありましたが、改めて、フィエールマンの強さとクリストフ(ルメール騎手)のすごさを感じたレースでした。

 フルゲートではないけれど淀の3200mで外枠に入ったので、フィエールマンが強いのはわかっているけれど、正直、クリストフじゃなければ勝てなかったのではないかと。同じような乗り方で勝てるジョッキーを探すのは難しいかなという印象です。もちろん他の人がダメなのではなくて、クリストフの馬に対する独特のタッチと、競馬を知っている、たくさんの引き出しを持っているということが大きいと思います。

 外枠からスタートを決めましたが、そのまま大外をずっと回るのではなく、自分よりも外に馬を置いていた。外からポジションを取っても、外々を回らないんですよ。ただし、内に行くんだけれども馬場も知っているので、内にも行きすぎない。当日の馬場状態でどこが伸びるかということをしっかり把握している。

 その中で、スタートから2分8秒〜13秒くらいの間の駆け引きが、もう本当にゾクゾクするほど面白くて。改めて最初からレースを振り返ると、まずは豊さんがキセキのゲートを決めたことに「おっ!」となりました。前走の阪神大賞典では大きく出遅れましたから、今回もスタートは難しいのではないかと想像して、僕は無印にしていたんです。スタートを決めた時には「豊さんにやられたな」と思いましたし、1周目の2コーナーでフィエールマン&クリストフはそれほどいいポジショニングではなかったので、やはり淀3200mの外枠からでは厳しいなと思いながら見ていました。

 向正面に入って、2分8秒くらいのところから(横山)典さんが仕掛けて行った。そこでクリストフがどう対処するのかと思ったら、おそらくついて行ったら負けるという判断だったのか、上りのところで動いて行って、下りを何もしないで下りて行く作戦だったと思います。だから典さんが上がって行った時、馬にスピードを上げないよう指示していて、その指示の操作が、もう完璧、絶品なんです。

哲三の眼

2019年の天皇賞・春(C)netkeiba.com

 僕が今回フィエールマンを対抗評価に留めたのは、外枠ということともうひとつ、3、4歳の頃よりも遊びが少なくなっていて、以前よりもスピードに対してすぐ反応してしまうイメージがあったからです。もちろんこれは悪いことではないんですが、フィエールマンは3、4歳の頃、ジョッキーが「思っているよりも伸びてくれた」というようなコメントを出していて、その感覚は・・・

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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