2021年05月29日(土) 12:00
生命力がみなぎる新樹の季節、眩(まばゆ)い陽差しを浴びながら歩いていると、カラスの鳴き声が耳に入ってくる。新緑の木々の枝を吹き抜ける風が、その声を拡散していく。ダービーは、この清新爽快の趣きの舞台にぴったりではないか。明日は来たらず、この瞬間にこそ全てをかけて戦う。この思いがみなぎるのがダービーだ。
競馬に関わるようになった頃、よく耳にした「ダービー馬はダービー馬から」という言葉が、今ほど鮮明になったことはない。出走馬の顔ぶれを見て、まず目がいくのがその馬の父親のこと。
必ず登場するディープインパクトは、この10年で6頭ものダービー馬を排出しているが、この3年は、ワグネリアン、ロジャーバローズ、コントレイルとの3連勝で、今年も6頭が栄冠をめざしている。ディープインパクトの前年にダービーを勝ったキングカメハメハも種牡馬として活躍しているが、ダービーは、ドゥラメンテとレイデオロが勝っている。この数年、2頭の産駒を抜きにしてはダービーは語れないが、2年前に2頭とも他界しているので、当然、この次の世代の種牡馬に目を移していかなければならなくなっていく。ここしばらくはその過渡期といっていい。
とにかく、6年連続で親子2代の優勝馬が誕生していて、今年も、ディープインパクト、ドゥラメンテ、キズナ、オルフェーヴルと4頭のダービー馬の子供、全部で9頭が2代制覇に挑戦するのだから、「ダービー馬はダービー馬から」の言葉には重みがある。
牝馬4頭目の優勝をめざすサトノレイナスもその1頭で、55キロの斤量は有利だ。レコードで決着した毎日杯1、2着のシャフリヤール、グレートマジシャンは、皐月賞をパスしてダービー一本という戦い方が功を奏するかどうか注目だが、ディープインパクト産駒のこの3頭は、どうしても無視できない。
こうした面々を向こうにして無敗の二冠を期待されるエフフォーリアは、エピファネイアの子。好位から抜け出して3馬身差をつけた皐月賞の完璧な勝ち方は、値打ちがある。父は菊花賞馬だが、ダービーはキズナの2着だった。かつてダービーはキングカメハメハの2着だったハーツクライの存在を思い起こさせる。7年前にワンアンドオンリーをダービー馬として輩出していたので、これに続く可能性は高いと言っていい。
展開面で注目したいのが、タイトルホルダーとバスラットレオンだが、前者の父はドゥラメンテ、後者はキズナ。それぞれキングカメハメハ、ディープインパクト産駒だからこの2頭は親子3代のダービー制覇という道筋が見えてくる。この先のダービーを暗示しているのだ。あとダービーは5着だったルーラーシップの子供で、バジオウ、ワンダフルタウンが出ているが、トライアルを勝ってダービー出走という共通点があり興味深い。
「夢に見て この瞬間を 人馬とも」
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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