心機一転の勝利

2015年09月17日(木) 12:00


京成杯AHとセントウルSの結果に

 その選択と決断のスポーツとも言われている競馬。その主役のサラブレッドは、人間の英知と憧れをかたちにした走る芸術品と呼ばれている。一頭一頭についてその記録が保存され、氏素姓の正しい生き物だ。だから、どんな結果になろうとも、不思議がることはない。なのに選択を誤ったときのダメージは残り、そこから心機一転をめざすのだ。この心機一転は、過ぎたるを悔いずの心がなければ前に進まないが、よく考えてみれば、これは主役のサラブレッドとて同じなのだ。

 土曜日曜のメイン4レースの勝者は、全てが人気薄だったが、その東西の勝ち馬4頭ともが「心機一転の勝利」であって、私どもの多くは、その選択と決断のスポーツで敗戦を喫したにすぎない。だから、心機を新たにこの先も賭け続ければいいのだ。もし、リスクを恐れるなら、休めばいい、ただそれだけのことではないか。その「心機一転の勝利」なのだが、そう志すには、当事者には拠(よりどころ)とするものがあり、事前にその思いを述べているものだ。多くが、それを感知できないでいたにすぎない。

 京成杯オータムHのフラアンジェリコは7歳馬。今年に入ってからの3戦が振るわないため13番人気だった。それでも斎藤調教師は「一週前の動きは良かったし、晩成タイプで体調はいい。ハンデは恵まれたし立ち回り次第。典型的な穴馬タイプ」と述べていた。6歳で高松宮記念を勝ったオレハマッテルゼが半兄だから、底力は認めてよかった。高速馬場や決め手勝負の戦いは向かないと言うから、小回りで力の要る馬場で注意したい。人気のないときの田辺騎手は、面白い働らきをすることも忘れずにいたい。

 セントウルSを勝ったアクティブミノルは、「スタートの速さが長所」と北出調教師は語っていて、「テンションを上げず、ここを目標にしてきた」と述べ、藤岡康騎手の「芝の6ハロンは好条件、ハナに立つのが理想」という言葉どおり、好枠を利してスプリントの常連ハクサンムーンにハナを譲らず逃げ切った。わずか6戦、古馬と初対戦の10番人気。新星はこうした状況から生まれる。こちらの心機一転と馬の心機一転とが合致するといいのだが。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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