大志を抱く勝利

2015年10月08日(木) 12:00


ストレイトガールの勝利に思う

 名を残した政治家には、生き抜く財産となるような名言がある。それは、自分が今一番必要としているものに見えてくるものだ。だから目に触れると、それだけで勇気をもらった気分になれる。これは、知っていた方が得だ。だが、だからと言って現実がそこまでいくとは限らない。人生は、思い描くとおり順調であることは少ない。よく、競馬に自分の人生を見ると言うが、それはレースで辛酸をなめているケースを指して言うことが多い。そこで、稀にタイトルを奪取し、さらなるたかみをめざす馬に気を引かれ応援もしたくなるのだ。そうした馬たちには、不思議とその名言がぴったり当てはまる。

 かつてのイギリスの首相ウインストン・チャーチルは、「過去にこだわるものは、未来を失う」と言い切っていた。そうでもなければ確かに戦っていけない。もっと先を見据えた力強い言葉なら、日本の戦後の総理大臣、吉田茂に「大志を抱けば、天下何ものか恐るるにたらず」がある。この心意気こそ壮ではないか。

 スプリンターズステークスを勝ったストレイトガールこそ、この2つの名言がぴったりの存在だ。一番人気でGIレースを勝つことを目標にしていたという藤原英調教師の達成観は如何ばかりかと思うし、去年3着と破れた香港スプリントで世界一をめざすという陣営の大志にも心を打たれる。しかも、これがストレイトガールの現役最後のレースだと言うから、いかにもドラマチックだ。このストーリーの結末が、願いどおり吉と出たら、この名誉をささげたい。それは、野口英世博士の「志ならずんば、再び故国の土は踏まず」だ。ちょっとオーバーかもしれないが、これぐらい大袈裟の方が力が出るではないか。とにかく、生き抜くための「ある決意」があったからこその大志なのだから、思いは力強い方がいい。

 古い書物にあった言葉にこんなのもあった。「志の低いものは、目のつけどころが低い」と。ストレイトガールの「大志を抱く勝利」は、様々な力を私どもに与えてくれた。このストーリーがどう完結するか、とても他人事ではない。大願成就を祈りつつ、ともに戦っていく誓いを胸にその日を迎えたい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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